Red_dotMANのブログ

映画の記録(ホラーが多めです)が中心のブログです。

『サスペリア』(1977)

 

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①あらすじ

 バレエ名門校に入学するためアメリカからドイツへ留学した主人公のスージー。そんな彼女を歓迎するのは傘なく立つと3秒で風呂上がりになる土砂降り、一向に乗せてくれないタクシー、やっと乗れたが非常に愛想の悪い運転手、そして何か意味深なことを叫びながら何かから逃げるように学校から土砂降りの中へスージーと入れ違いで走りだすという、これほど不吉なことがあっていいのだろうかというぐらい幸先の悪い展開の連続が数珠つなぎで起こる。そして学校に入学してからもスージーの周りで不可解な事件が相次いで起こるのであった。

 実はスージーがいる学校は昔、魔女によって造られた建物であるということが発覚し、夜な夜な先生たちが向かっている地下へと意を決して降りたところ、そこで恐ろしい光景を目にする。

 

②恐怖を引き立てる要素 

 主人公が入学して初めて生徒たちと面を合わせた時に感じる居心地の悪さがまず我々の恐怖の神経を刺激する。誰でも新天地に一人で赴いてすぐだと、そこに昔からいた人たちのことをまるでエイリアンのように感じてしまう。身内ネタを聞かされたり、独自のルールの存在に対してのあの居心地の悪さが非常にうまく再現されている。

 この後にそんな普遍的な恐怖でない、エクストリームで不条理な恐怖がスージーと観客を襲う。そんな恐怖をより引き立てるのが”音楽”と”色彩”である。

 

③戦慄する音楽 

 まず前者は映画音楽を担当するイタリアのバンド”ゴブリン”がワンシーンワンシーンのカットを見てから作曲をした。なんてことないシーンから突如流れ出す恐怖のメロディーによりこれから何かが起こる予感をさせ緊張をさせる。そして恐怖の正体が現れた瞬間に同じトーンで続いていた音楽は激しく荒げる。

 

 

④こだわり抜かれた色彩

 今作の二つ目の特徴である色彩は誰が見ても圧巻。主に赤・青・黄の三色がネオンに暴力的に光り続け、登場人物の感情や状態に呼応して色が変わる。これは監督自身が40年代の映画を再現しようとしていた。そしてそれが現実離れした悪夢的世界を形成する大きな要因の一つとなっている。

 

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ダリオ・アルジェントとは

 祖父は映画配給会社で勤め、父親は映画プロデューサーと彼が映画関係の仕事に就くのは必然であった環境であった。ダリオ本人は映画評論家としてまずは映画業界へと入っていく。そして脚本を提供するようになり(セルジオ・レオーネ監督の『ウエスタン』の原案を作成)、1969年『歓びの毒牙』で映画監督デビューを飾る。(ちなみに『サスペリア』の魔女を倒すときにスーザンが使用した孔雀の羽は『歓びの毒牙』の現代に対するメタファーである。)

 『サスペリア』から始まる”魔女三部作”(『インフェルノ』『サスペリア・テルザ』、同監督の『サスペリア2』という映画があるが、これは邦題がクソなだけで今作とは直接的な関係はない)はもちろん、他の作品でも呪術的なテーマを選んでいるが、彼にとって呪術とは映画で語る上ではフィクションに孕んでいて扱いやすいだけで、それ以上のものではなく、なんなら魔女や悪魔の存在を信じていない。今作は監督自身が見た夢に『白雪姫』をイメージしながら作られた。

 ダルジェントの全作品に通ずるものは、社会的頽廃が作り出す人と人の間の不信感を肥大化させている。いわば”信用できるものを一切排除する”こと。

 そして観客を自分の作り出した世界へと無理やり落とすのがダリオ・アルジェントの狙いである。